僕の会社には、“働かないオジサン”がいる。
「キャリアアップってのは、企画とかプロジェクトを動かす人間がやるもんだろ。俺らみたいのが考えても仕方ない。若い奴には、俺の仕事のやり方を教えてやる」
――そう言い放った。
要するに、大卒で総合職として採用されたわけでもないお前は、キャリアアップなんて考えるな。黙って俺の仕事のやり方を見てろ、ということらしい。
今の若者たちが抱えている「働き方の多様性」なんて、働かないオジサンには理解しようがない。
彼が生きてきた時代の常識と今の常識は、あまりにもかけ離れている。
働かないオジサンが若いころからやってきた仕事は、今ではどんどん無くなってきている。スコップ片手にひたすら歩くメンテナンスや、判子だらけの手書き書類――そんな時代の遺物たち。
人間は40歳を超えたあたりで、新しいことに挑戦するのが億劫になる。
それは誰にでも当てはまる。
大企業に勤めていれば、新しいことに挑戦しなくても、働かなくても毎年給料が上がっていく。 55歳で年収が1,000万円だったと、働かないオジサンは自慢していた。
新しい事はせず、できる仕事が減っていっても、給料が上がる。 だから「働くこと」がバカらしくなって、ますます働かなくなる。
仕事への興味を失ったら、次は“退職後の準備”に取りかかる。
退職金は、だいたい2,000万円。
「再雇用で給料が半分以下になっても大丈夫。年金もたっぷりもらえるしな」
……働かないオジサンは、聞いてもいないのに、いろいろ教えてくれる。
手厚すぎる雇用形態と社会保障が、“働かないオジサン”を作りだしている。 僕はそれを大企業の中で目のあたりにした。
今でこそ「ワクワクしながら働きたい」なんて思っているけど、この会社に入社したころの僕は“働かないオジサン”に憧れていた。
仕事なんて、我慢してやるもんだ。 大企業に入れたからには、できるだけ楽して、オイシイ思いをしたい。 ――心の底から、そう願っていた。
でも時代は変わり、あと5年もすれば、“働かないオジサンのポスト”が無くなる。
現在アラフォーの僕らは逃げ切れない。 これから、“逃げ切れないオジサン”がうじゃうじゃと現れてくる。
良くも悪くも、時代が変わる。 平成の終わりから、令和のはじまり―― この激動のサラリーマン変化の時代を、僕はリアルタイムで体験している。
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